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ミライの礎




小生が参加している平成志学塾の読書会で次の2冊の本を中心に日本の大学教育について話し合った。塾頭は元大手商社執行役員のSさんで、月に一度開催している。 ・オックスフォードからの警鐘  ・大学はもう死んでいる?  著者の一人である苅谷剛彦さんは、1955年、東京都生まれで。オックスフォード大学教授。専門は社会学。この2冊で一組となっているように感じられたが、どちらかを1冊読むのであれば、「オックスフォードからの警鐘」がまとまりが良いのでおススメ。本の内容を一言で表現すると「今の日本の大学教育はなっちょらん」ということであろう。ではどこが問題なのか。そしてどうすれば良いのかを会で議論した。 英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が、世界の大学を順位付けした「世界大学ランキング」なるものを毎年発表している。昨年9月に発表された2020年の結果は、TOP100位以内の日本勢は東京大の36位(前年42位)。京都大の65位(同65位)のみ。後を追うのは東北大と東京工業大が251~300位、名古屋大と大阪大が301~350位。早・慶に至っては600位~800位の間ということである。

世界のTOP10は米国と英国の大学で占められている。1位はオックスフォード大(英国)、2位はカリフォルニア工科大(米国)、3位はケンブリッジ大(英国)、4位はスタンフォード大(米国)、5位はマサチューセッツ工科大だった。アジア勢では、中国の清華大(23位)、北京大(24位)、シンガポール国立大(25位)、香港大(35位)となっており、200位以内に入ったのは中国では7校、韓国では64位のソウル大をはじめ6校、香港は5校で、200位以内の括りでみれば、いずれも日本勢を上回っている。 勉強会では様々な意見があったのだが、小生の意見は、「日本の大学がこのランキングの何位に何校入ろうと別に問題ではない。」ということ。このランキングはあくまで英国の教育専門誌タイムズが彼ら独自の評価基準に従って点数をつけ、総合得点を争っているだけにすぎない。彼らは明確にその目的や評価基準もウエブサイトで述べている。「最も有効な研究機関を持つ大学はどこか。その情報を共有することでこれから大学を選ぼうとする未来の研究者に、より正しい判断ができるように材料を提供する。」ことを目的としている。判断基準は透明性を高めるということで、情報収集の方法や点数の配分もきちんとサイトに述べられている。以下がその項目の大枠である。ご興味ある方は下のサイトで詳しく見てください。

The performance indicators are grouped into five areas: Teaching (the learning environment); Research (volume, income and reputation); Citations (research influence); International outlook (staff, students and research); and Industry Income (knowledge transfer). 1つの例としてはInternational Faculty(外国人先生) とInternational Student(外国人生徒)の割合や、先生と生徒の割合も重要な判断基準となっている。1位のオックスフォード大学は、外国人生徒の割合が41%。36位の東京大学のそれは12%である。ここまで差をつけられて36位というのは逆に立派かもしれない。

タイムズが何を目的としてランキングを作るのか。それは自分らがモノサシ(基準)を作ることで、世界基準となり、より多くの留学生、特に中国からの留学生を呼び込みたいと思っているからである。つまりは学費や生活費を自国に落としてもらうためのビジネスなのである。そうしたインセンティブがなければこういったことはしないでしょう。

話を戻すと、THEの大学ランキングがどうということではなく、「日本社会が大学に何を期待するのか。日本の未来を担う、人材育成をどう考えるのか。」が重要なのではないか。問題は日本の企業が学卒、院卒者の採用基準に研究の成果を求めておらず、むしろ「地頭の良さ」、「社会人としての礼節」、「円滑なコミュニケーション力」、「他者と軋轢を起こさずに仕事をやる調整力」、そして「ゼネラリスト思考」を求めていることにもあろう。大学時代で学ぶ成果を日本の企業は卒業生に求めていないのではないか。努力は報われるというインセンティブ(利益)を日本企業、そして日本社会は講じるべきであろう。

さらに言えば、どんな未来を日本社会が目指しているのか、その方向性やビジョンが不明。目指すべきビジョンが不明であるがゆえにどんなその礎となる人材がどんな人なのか、そしてその人を育てる教育はどうするべきかがさらに不明になっているのではないかとも思える。どうしたものか。考え続けたい。 ミライの礎を作るコーチ

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