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Takanori Sakai

通勤考




吾輩は遠距離通勤が苦手である。むしろ嫌いと言っても良い。あまり意識はしていなかったが、若いころから通勤時間をなるべく短くするように、もし通勤が長くなってしまう場合には、その負担が少なくなるような工夫をそれなりにしてきた。「自分は通勤が好きだ!通勤時間にはこんなに良いことがある。・・・」と思われている方がいればぜひお声がけください。

先週は、たまたまであろうが、電車での移動距離が半端なく長くなってしまった。現在の仕事は横浜市内でできれば完結したいのだが、重なる時には重なるもので、都内の約束事がこの週を狙いすましたように入ってきたのだ。会社員時代に逆戻りしたかのようで、通勤時間だけを測れば立派なサラリーマンである。会社員の諸兄には申し訳ないが、自営になって一番嬉しかったのは通勤がなくなったことのような気がする。もっと崇高なことを言えれば良いのだが。

五十路のご同輩は、高校くらいまでは公立の学校に行くのが多い時代だったのではないか。高校時代の吾輩の通学は都内とは逆方向の下り方面であったので、国鉄は(当時はそう言ったのだ)がらがらに空いていた。千葉県のはずれに位置する市川駅から、東船橋駅というローカルな駅に3年間通った。東京方面へ行く総武線快速は当時は大変混雑をしていて、毎朝駅員さんがまさに、「押しくらまんじゅう!押されて泣くなぁ!」の修羅場である。それを目の当たりにして若いなりに、「世と逆方向に行くのは、なかなかに良いではないか。」と思ったりもした。

大学時代は仙台市でバイクで通学をしていた。築30年の安アパートからは10分くらいであった。住んだことのある方はご存知であろうが、仙台は坂が多く、雪が降るとバイク通学は難しくなるが、それ以外は利便性の良い街である。地震は怖いが。そして就職。配属されたのは横浜市の京浜工業地帯にあるとある工場。実家から通えないこともなかったのだが、当然近くへ引っ越した。バス通勤であったがそれでも30分は出なかったであろう。それも自分の基準の一つになっているのかもしれないが、自分の中では快適さを感じられる通勤時間はせいぜいが30分程度であると思う。皆さんはどうでしょうか。

邱永漢さんは自分が尊敬している実業家の1人。彼が「野心家の時間割」という本の中で「職住近接」を勧めている。「通勤には大変なエネルギーを費やすので、できる限り仕事場の近くに住んだほうが良いよ」という内容である。ご興味ある方は、アマゾンで中古本で買うと良い。この本が(配送料はかかるが)1円で購入できるというのは、価格が本の内容に比例していない一例だと思います。

例えばサラリーマンを22歳から62歳まで(最近ではもっと長いが)勤めたとする。すると40年である。毎日通勤時間が往復で2.5時間とする。公共交通機関での移動時間が往復2時間としても、待ち時間や最寄り駅に着いてから会社までの移動時間、そして会社の入り口に入ってから自分の席までの移動時間を入れれば、だいたい往復2.5時間くらいはかかっているのではなかろうか。

すると生涯で通勤にかかる時間は、

 40年✖️2.5時間✖️250日

くらいで、約25,000時間である。ちょっとピンとこないが、1年間の労働時間を約2000時間とすれば、これは12.5年分。時給を1000円とすれば約2500万円分のキャッシュに換算される。その分を労働にあてることができれば、巷で話題の定年後に年金生活をする際に生涯で足りなくなる2000万円を軽く超えるだけの原資に成り得るのではないか。

「そんなに都合良く切り売りできないから困っているのだ!」というご意見もあろう。しかしUSではすでにニューヨーク市に拠点を置く会社にテレ・ワークを行いながら、ボストン市に住み、家族との時間を快適に過ごしている人たちも少なからずいる。彼らにできて日本人にできないわけがない。

環境大臣の小泉進次郎氏がパタニティ・リーブを取った。無責任発言をすれば、いっそセレナーデ的にこうしたテレワークを行い、育児休暇以降も、しばらくは自宅から仕事をしたらどうか。閣僚会議にもテレビ電話で出席すれば良い。それができるということを示せれば、きっと多くの私を含めた通勤嫌いの会社員からの拍手喝采。票を獲得できるのではないか。もっとも吾輩は横須賀市に住んでいないのだが。

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